花ひらき、今ここを天国に。
愛溢れる心優しい皆様、
こんにちは。
いかがお過ごしですか?
今日の午後、
ラジオから素敵なお話が聞こえてきました。
それは怒りのお話だったんですが、
とても素敵だったので皆さんにもご紹介したくなりました。
生きていると、怒りの場面に出会います。
そして、怒りをどう扱うかで関係を破壊したり、より親密になったり。
今日のお話を参考に、幸せを創る怒り方、考えてみたいものです。
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階段の踊り場で。
「喧嘩は、面とむかってするものよ!」
当時70歳前後だったと思われる、その女性は言った。
彼女の名前は、フェルナンデス。
私、ロバート・キャンベルが、
ハーバード大学の大学院生だったときに住んでいたアパートの大家さん。
あったかく包み込むような笑顔と気品あるたたずまい、
そしてポルトガルから移民して生き抜いてきた、
そんなたくましさも兼ね備えた優しいおばあさんだった。
彼女は1階に暮らし、私は3階を借りていた。
大学から帰った私をいつものように呼び止める。
「おかえりなさい!ポートワインでも飲む?」
「ああ、ありがとう。あ、今日ね、ちょっと嫌なことがあって」
階段の途中で立ちどまり、私は愚痴をこぼした。
「どうしたの?」
「ある人と、ちょっと関係がこじれそうだったんで、手紙を書いたんだけど、
ボクの思いが伝わらないどころか、逆ギレされてしまったんだ・・・」
すると、フェルナンデスさんは、少し厳しい顔になって、こう言った。
「ロバートさん、いいですか?
そういうときは、その人に会って、
時間をとって、面と向かって、ちゃんと喧嘩しなさい。
相手の目を見て、表情を感じ取って、向き合いなさい」
私は今も思い出す。
階段の踊り場に射していた春の薄日と、優しく諭すような、おばあさんの眼差し。
人と一生懸命、向き合うということ。
私、ロバート・キャンベルがハーバード大学の大学院生だった時に住んでいたアパートは、
大学から地下鉄でひと駅の、閑静で緑豊かな場所にあった。
先輩の紹介で入ったそのアパートは、戦前のままのレンガづくりの一軒家。
しっかりとした板張りの床、暖炉、吹き抜ける風は心地よく、
多くの時間を見守ってきた静謐な空気が、気持ちを落ち着かせてくれた。
私はその3階を借りていた。
大家さんのフェルナンデスさんは、ポルトガルから家族で移民してきた。
早くに旦那さんを亡くされ、女手ひとつで子供を育て上げた。
優しいけれど、タフなおばあさん。
そんな彼女にもらった言葉は、今も私の心にある。
特に印象的だったのが、喧嘩の仕方。
喜怒哀楽の、怒、怒り。
フツウはネガティブで排除すべきイメージを持つけれど、
人生において、怒りが大切であることを彼女に教わった。
正しく、怒(おこ)る。
納得がいく喧嘩をする。
私は今も、メールで怒ったりしない。
留守番電話に怒りの声を、残したりしない。
どう収拾できるかわからないけれど、
喧嘩は相手と1対1で会って、面と向かってするもの。
そうすれば、結果はどうあれ、納得がいく。
「ロバートさん、食事中に喧嘩をしてはダメよ。
食事というのはね、イチバン無防備な時間なの。
相手に全てをさらけ出し、お腹を見せる瞬間。
そんなときに喧嘩をしてしまったら、
とことん行ってしまう。
収まるものも、収まらないの、覚えておいてね」
当時、私、ロバート・キャンベルは、ハーバード大学の大学院で日本文学を学んでいた。
明るく闊達な会話の中、大学にはいつも独特な緊張感が漂っていた。
そこに学ぶ誰もが、ぞれぞれの課題を背負い、何より自分自身と真剣に向き合っていた。
そんな環境の中、フェルナンデスさんは、いつもタフだった。
テレビで大統領選を観ているときは誰よりも声高に言う。
「もっとしっかり意見を言いなさい!」
そう、彼女は、人と人が一生懸命向き合うことが好きだった。
ラブロマンスも、プロレスも、ディベートも、そして喧嘩も。
どこかで人との衝突や摩擦を避けて、スマートに生きたいと思っていた自分にとって、
フェルナンデスさんの姿は、『人間らしく』映った。
彼女の包み込むような笑顔は、寒い部屋を暖める暖炉のように、私の心に残り続けている。
拝啓、フェルナンデス様
お変わりありませんか。
大変ご無沙汰しています。
数えると、もう30年も前のことですね。
大学院生だった僕が、フェルナンデスさんの家の3階を借りて暮らしていたあの頃、
ほんとにお世話をかけました。
1階に住むあなたは、ポルトガルから移民した、タフで優しいおばあさんで、
とにかく話がはずみ、面白かったです。
疲れて学校から帰ってくると、僕のことを居間にあげて、
手編みレースがかかったソファーで、ポートワインをよく飲ませてくれましたね。
大切なことは、友達になりたい人、なりそうな人達とはよく一緒にご飯を食べることだ、
と言いましたね。
それから、どうしてもケンカしないといけないような時には、
食べ物や電話も使わず、2人っきりで向き合って、
気が済むまで大声で言い合うのが一番いいんだよ、ということを言われた時に、
私は心底びっくりしました。
ケンカの仕方を、ポルトガルのおばあさんから教わるとは…。
ちょっぴり恥ずかしくもありましたが、嬉しかったです。
少し遅れましたが、あの頃のことに、御礼が言いたくて。
サンキュー・ソーマッチ。
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このお話は、
TOKYO Fm ゆうちょLETTER for LINKSより
ロバート・キャンベル氏のお話
2014/5/18の記事を再掲載しました。
いつもありがとうございます。
ますますあなたが輝きますように。
花ひらき、今ここを天国に。